田中建設部長の答弁とその解説
2020年9月3日、函南町議会で大庭桃子議員が行った一般質問「軽井沢のメガソーラーの行方はどうなるのか」に対する答弁を解説します。
【答弁①】
「再エネ条例の適用にかかる着手日の捉え方についてお答えします。
『函南町自然環境等と再生可能エネルギー発電事業との調和に関する条例』の適用に付きましては、昨年の議会でも回答しておりますとおり、全面的に条例を適用することにつきましては事業者に対し条例を遡って適用することにつながり、行政権の濫用と判断される恐れがあるため適用することは難しいと考えております。」
結論
条例を遡っての適用にはなりません。従って行政権の濫用にはなりません。
根拠
最高裁判例より明らかです。
工事着手前に施行された法律や条例は全面的に適用されます。
解説
条例の文言で判断が分かれることは、よくあることです。
それ故、条例の文言の解釈や運用権は、その条例を制定した自治体にあります。
ただし、それは無制限に許されるものではありません。
もし、無制限に許されてしまうと、時の権力者の独断で、ある者には条例を適用し、ある者には条例を適用しないという不平等が生じ、憲法に定められた法の下の平等に反する行為が行われてしまうからです。
それでは、自治体に許される条例の解釈や運用の範囲はどのようなものでしょうか。
最も重要なのは、法律や条例の冒頭に必ず規定されている、法律や条例の目的です。
この目的から逸脱した法律や条例の解釈や運用は違法行為 ( 行政権の濫用 ) となります。
それでは、本件条例の目的を見てみましょう。
条例には「災害の防止」や「住民の安全を守る」ことが主たる目的として規定されています。
事業者のことは何も規定されていません。
条例の目的に沿って解釈し、条例を適用しなければなりません。
そして、その条例の目的に沿った解釈運用である限り、行政権の濫用にはならないのです。
ご理解頂けましたでしょうか。
以上の理由からも明らかなとおり、田中部長の答弁には法的根拠が無いばかりか、函南町は、最初から軽井沢メガソーラー建設の事業者に条例を適用したくないという意図を持って、1年以上、現在に至るまで、その様な根拠無き答弁を繰り返し、議員や住民を騙していると言っても過言ではないでしょう。
【答弁②】
「しかしながら、条例施行日において、『既に、法令の規定に基づく許認可の申請もしくは届出を行っている場合』や『既に、稼働中の発電設備』であっても施行日以降の変更の届け出やそれに伴う町長の同意、稼働状況等に関する報告、事業の廃止等の届け出については、条例が適用できるものとなっています。」
結論
条例適用に関して意図的に理解し難いように答弁しています。
解説
上記の答弁は、一見、条例の部分適用を述べているように見えますが、下線部の説明は、全く別次元のものを、わざと並列して挙げ、意図的に理解し難いように答弁しています。
県のモデルガイドラインには、太陽光発電事業を行うために必要な許認可として27の関係法令が示されています。
現在、取得している許認可は、その内、たった一つ「林地開発許可」だけです。
条例の施行前に、『既に、稼働中の発電設備(発電事業を始めた事業者)』に対する答弁部分は不十分ながら正しいです。(ブルー社は当然該当しませんが)
しかし、『既に、法令の規定に基づく許認可の申請もしくは届出を行っている場合』についての答弁は間違っています。
ブルー社は行政機関 (本件では東部農林事務所)に平成30年10月31日に林地開発許可申請書を提出し、即日、受付がなされました。
「受付」とは、申請書類の内容を点検したり審査することではなく、単に申請書を受け取ったに過ぎません。
許認可は、必要な書類を基に審査する訳ですから、不十分な段階では審査はできません。
申請されたからといって、全て許可や認可される訳ではありません。
当然、不許可になることもあります。
私たちは、ブルー社の提出した申請書類を情報公開請求により入手して点検しました。やはり、何度も補正や補足が繰り返されており、審査まで数か月かかり、受付から許可されるまで一年近くかかっています。
以上の理由から、お分かり頂けたと思いますが、函南町のように申請や届出をした時点で、事業は開始していると判断している行政機関は日本には存在しません。
【答弁③】
「また、3月定例会におきまして函南町の条例は届け出日を起点としているが他の市町の条例のどの部分と考え方が類似していると考えるかという一般質問に対しまして工事の着手ではなく法令の許認可等をひとつの起点としている考え方が県内のいくつかの市町と類似していると回答しているものであります。」
結論
函南町の条例には、事業の着手は届出日が起点であると規定した条文はありません。
解説
「函南町の条例は届出日を起点としている」との答弁は、事実に反します。
「工事の着手ではなく法令の許認可等をひとつの起点」との答弁は、極論に基づくものです。
過去の答弁でも明らかなとおり、県のモデルガイドラインに基づいたものとのと説明していますが、県の再エネ課の課長に確認した結果、モデルガイドラインは事業者が届出をする時期を示しただけで、事業着手の時点だとは考えていないことが明らかです。( 函南町独自の考えであることを確認済みです。)
静岡県のみならず全国の市町も、いずれも工事着手の前に条例が施行されていれば適用するとの考えです。
それが証拠に、伊東市をはじめ四万十市などにおいても条例を適用しています。
それにより事業者から自治体は訴えられていません。
理由は簡単です。
最高裁判例が示すとおり、工事着手前に施行された条例の適用を不服として裁判所に訴えても、事業者は勝てないからです。
伊豆半島では、確かに、下田市、東伊豆町、河津町は、事業者が一つ残らず許認可を取得しており、いつでも工事に着手できる段階に至っているなら、条例は適用しないとの考えです。
この考えは、工事に着手していなくても、着手のためのすべての手続きが完了した段階であるが故に、着手と同等にみなすという判断をしているもので合理性や妥当性があるものと思います。
しかし、函南町は、必要とする許認可のただ一つ、それも申請もしくは届出していれば、条例を適用しないとする考えは、全国市町との考えと余りにかけ離れたものと言えることが、ご理解頂けたのではないでしょうか。
※いずれにしても、函南町の答弁や私たちの解説を鵜呑みにするのではなく、皆様方、ご自身が関係機関にお尋ねいただき、どちらの説明が本当かを確認して頂けると真実が明らかになると思います。
いずれの行政機関も、質問に対して誠実かつ親切にお答えして頂けますので、お気軽にお尋ねください。
一般質問「軽井沢のメガソーラーの行方はどうなるのか」
(函南町議会2020年9月3日)
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