工事前なのに114.9億円損失の裏事情

条例違反を前提としたIR情報

トーエネックはIR情報で「問題なし」と公表した事業は、そのわずか3ヶ月後に急展開、114.9億円(税込み)もの特別損失を計上したことを公表しました。
この特損を公表した日は、函南町が条例違反の事業者として同社の社名を公開した日でもあり、これを事前に告知されていた同社はこれに合わせて発表したものと思われます。

トーエネックが公表した有価証券報告書(第104期)によると、静岡県函南町メガソーラーの完成予定は2025年10月となっています。
そして、別のページではこれを基に固定資産の減損損失の計上要否を判断しており、結論的には将来の利益の方が大きいので減損損失は計上しないとしています。

トーエネック有価証券報告書(第103期)より

しかし、この時すでに事業者は函南町から数回に渡る勧告を受けていました。
つまり、条例違反をする前提の判断だったわけです。到底、法令遵守の企業とは呼べません。

トーエネック有価証券報告書(第103期)より

まだ工事前なのになぜ114.9億円も必要なのか?

トーエネックは函南町メガソーラーが完成後、ブルーキャピタルから110億円で事業を売買する契約をしていることがわかっています。
ところがこの事業は完成どころかまだ工事さえ始まっていません。

そして工事の遅れの原因の多くがブルーキャピタル側にあることから、仮に計画が頓挫したとしてもトーエネックがその全額を支払うというのは奇妙な話です。
トーエネックの担当者はこのことについて「この特損は確定したわけでは無い」と説明していますが、3ヶ月前の「2025年10月までに完成すれば将来の利益の方が大きい」という脳天気な判断とは明らかに態度が急変しています。

トーエネック「特別損失の計上及び第2四半期業績予想と実績との差異並びに通期業績予想の修正に関するお知らせ」より

なぜ契約の満額とも言える114.9億円もの特損が必要なのでしょうか?
もし今でもメガソーラーを完成させるつもりがあるのなら、その後の売電収益を考えれば全額を損失とする必要はありません。
逆に計画を中止する考えなのなら、これもまた満額を支払う必要もないでしょう。

それではなぜ28億円の黒字予想から一転し71.3億円もの赤字予想にしてまで、この損失を計上する必要があったのでしょか?
これらの状況から考えられることとしては、トーエネック側が一方的な理由により契約を破棄せざるを得ない裏事情があるのではないかということです。

トーエネックに反社の影?

ここで連想させるのが、山梨県甲斐市での事件です。
トーエネックはブルーキャピタルから買い取ったメガソーラーについて、県当局から防災工事の不備を指摘されると直ぐにブルーキャピタルに買い取らせています。

山梨県知事

山梨県知事に「極めて社会的不誠実」と断じられたトーエネックの担当者は「施工業者に責任を持って工事して欲しかった」「売却後も現地を見て適切に指導する」などと言い訳をしましたが、実際は何ら関与していません。
責任感があるのなら工事後の物件をまた再び買い戻しているはずですがそのような動きは見られません。

読売新聞(2021年11月17日版)

そもそもなぜこのような杜撰工事になったのか?そしてこのような事件を起こしてまで、なぜトーエネックは問題児ブルーキャピタルを重用し続けるのか?
その答えのひとつと考えられるのが、トーエネックの重役自身の反社との関わり疑惑です。

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この疑惑が事実であれば、トーエネックは一刻も早くブルーキャピタルから手を引く必要があります。
親会社の中部電力からは既に函南町メガソーラーからの撤退の指示が出ているとの内部リークがあります。
しかし「山梨県と同じ失敗を繰り返さないように」との無理難題を押しつけられているとの情報もあります。
これらをクリアするためには、大金の手切れ金が必要なのかも知れません。

トーエネック有価証券報告書(第103期)
トーエネック有価証券報告書(第104期)
トーエネック特別損失のお知らせ