条例適用を求める請願に関する議論

法的根拠なく進む議論
なぜ町の弁護士に確認しないのか?

住民の情報公開請求で公開された黒塗りの弁護士相談記録

町議会では議員全員が軽井沢メガソーラー計画に反対し、今後も計画阻止に向けて行動していくといいます。
ところがなぜか条例適用には賛成しない議員がいます。

町議会では条例適用が「できない」のか、「しない」のか、曖昧なままで議論が進んでいます。
重要なのは個人の感想ではなく、その法的根拠です。


軽井沢メガソーラーに条例適用を求める請願の討論
令和元年第4回(12月)函南町議会定例会の会議録より。

議長(中野博)
請願書(日程第20、請願第3号)について、議題として話し合います。
この請願書は、12月2日の定例会で、総務建設委員会が審査を頼まれていたもので、その請願書について、まず総務建設委員長が報告します。

総務建設委員長(市川政明)
はじめに、審査の流れを説明します。
12月6日の総務建設委員会で請願の審査をしました。

請願の内容は、「町長に軽井沢メガソーラーの利用者に対し、条例を適用すること」を求めるものです。

請願に賛成する意見として、「町でも反対運動が起きている」という意見や、「議会としてアクションを起こしたい」という意見がありました。

請願に反対する意見としては「条例の解釈の違いがあるため、条例適用は難しい」という意見や「条例適用が正しい判断とは言い切れないため、条例の採択は困難である」という意見がありました。

意見を聞き、討論をして、委員会の結論として、採択をしたところ賛成に手をあげた人が少なく「条例の適用を求める請願」は不採択となりました。続いて、請願審査報告書を読み上げます。

令和元年12月11日、議会議長、中野博様。
総務建設委員会委員長、市川政明。

請願審査報告書令和元年12月2日第4回(12月)函南町議会定例会において、総務建設委員会に審査が依頼された請願(第3号)を審査した結果、下記のように決定したので、函南町議会会議規則第94条の規定により報告します。

1 件名:請願書。

2 請願趣旨:函南町議会は、軽井沢メガソーラー設置予定場所が抑制区域内のため、事業者に対し、「函南町自然環境と再生可能エネルギー発電事業との調和に関す条例」により、町長がメガソーラーの発電設備設置に同意しないと決定するよう、議会がしっかり話し合って、(町長に)求めてください。

3 請願者:軽井沢区長 渡邊一英、ダイヤランド区長 吉原英文。
4 紹介議員:古村 高。
5 審査結果:不採択
6 審査日:令和元年12月6日。

以上です。

議長(中野博)
総務建設委員長の報告を終わります。
いまの委員長の報告について質疑をします。質疑はありませんか。

兵藤慎一
総務建設委員長の説明から、委員会でだいぶもめた感じがわかります。もう少し中身を、どういう反対、賛成の意見があったのか、もう少しかみ砕いたお話を聞きたいです。状況なども含めて、よろしくお願いいたします。

総務建設委員長(市川政明)
先ほど、前で説明したことと同じことになりますが、「町でも反対運動が起き、また、議会としてアクションを起こす」ということが(請願に)賛成する意見でした。反対する意見としては、「条例の解釈としては、適用は難しい」「条例の判断が正しくない」というような、「(請願の)採択は困難である」というような意見がありました。
以上です。

議長(中野博)
ほかに質疑はありませんか。
〔「なし」と言う人あり〕
これで質疑を終了します。
これより討論を行います。

古村高
11月5日に軽井沢区及びダイヤランド区から提出された請願書に賛成します。その説明をします。

請願の趣旨は、軽井沢自然環境と再生可能エネルギー発電事業との調和に関する条例(以降、条例)において「軽井沢メガソーラー設置予定場所が抑制区域内にあるので、町長が事業者に対し、発電所設置は同意しないと決定をする」、このことをこの議会で議決することを求めているものです。

さて、今回の台風19号において、函南町の中山間部、丹那やその近隣では非常に多くの土砂崩れ、住宅倒壊が発生しました。
中山間部で森林伐採した場合、保水力が減りメガソーラー建設地はより雨に対して弱くなります。軽井沢メガソーラー予定地の北側1キロメートルにある2年前に開発された1.3メガソーラーの直下が、今回、調整池が役に立たず大きく崩れました。雨で崩れる山間部に60ヘクタール、40メガワット−40メガワットということは(今回崩れた)メガソーラーの40倍の規模ですがーこのような巨大なメガソーラーをなぜ建設するのでしょうか。
町はせっかくつくった今回の条例を、なぜ町長は(条例を)適用しないのでしょうか。
我々「メガソーラーを考える住民の会」は、町に反対しているんではなく、町が懸命につくってくれた、何度も修正し、苦労してつくってくれた条例を何とか使おうと努力しています。なぜ条例を使おうとしないのでしょうか。

先日の私の一般質問に対する答弁で町は、(建設を)阻止できる法的な措置を持っていないということでしたが、条例適用という法的な措置があるではありませんか。複数のしっかりとした法的解釈からも、申請日と工事着手日は異なることを確認し、関連する森林法に基づく林地開発許可、環境アセスも、申請日と工事着手日は異なることを示しています。また、近隣の市町の条例も、函南町以外の全ての条例が工事着手日を起点にしています。工事着手日はまだ来ていません。よって、条例は適用できます。

「遡及的なところがあり心配である」と町は言いますが、工事が始まっていないので、遡及にはなりません。町が訴えられる法的な問題はありません。今こそ条例を使うときです。今を逃せばもうこの条例を使うときはないと確信します。

先日、3日前の日曜日、12月8日のメガソーラーシンポジウムでは、町の河川下流域の方が「町長の不同意、議会も反対議決、その地区の町議の方も不同意で、てっきり条例は適用されて、軽井沢のメガソーラーはとまるものだと思っていたが、それが間違っていたとそのシンポジウムでわかり非常に驚いた」という発言がありました。町民の大多数はそのように思っているかもしれません。

我々のグループもその町民に対するメッセージの発し方が間違っていたかもしれません。また、町も議会も町民に対するメッセージの発し方が間違っていたかもしれません。町民の大多数はもうメガソーラーはとまるんだと思っているかもしれません。大変な問題だと思います。ただ反対、不同意と言っているだけではメガソーラーはとまりません。

函南町の河川下流域の方も中山間地の方も、函南町全体が住民の命のために、子供たちの安全のために、この巨大な軽井沢メガソーラー建設を阻止する目的で、町長にこの条例の適用を求め、ここで議決したいと思います。
以上が、賛成する理由の説明です。

議長(中野博)
次に、本件に反対する者の発言です。

杉村清
それでは、請願書(請願第3号)に反対する理由を説明します。
今回提出された請願書の内容は、9月の定例会で不採択となった請願「条例施行と同時にメガソーラーの事業者に対し条例の適用を求める」という同じ内容であることが、委員会でも紹介議員(古村議員)より説明がありました。条例を適用して、メガソーラー設備の設置に同意をしないという趣旨もほぼ同じだと感じています。
請願は、特別委員会において多数の議員の熟慮の末、不採択とされました。その理由は、既に事業着手し、その後に施行した条例をさかのぼっての適用はできないという理由でした。事業着手の時期の解釈が、町と請願者では違っています。
そこが違うため、請願は採択されませんでした。

函南町議会としては、軽井沢メガソーラー建設計画に対する反対決議を9月の定例会でしています。私も議員としてだけでなく一函南町民としても、繰り返しではありますが、メガソーラーの建設計画には反対です。また、町長も反対の意思を表明されており、町として間違いのない公平で確実な形で軽井沢メガソーラーに対して(町長に?町に?誰に?)行動をとってほしいと切に願っております。ただし、請願第2号が不採択とされてから今日までの間に町の事業着手の時期に対する考えを覆す論理的な理由がないと私(杉村)は考えるため、前回の請願と同様に、条例適用を町に求めることはできないという結論に至りました。以上が、反対する理由の説明です。

議長(中野博)
ほかに、賛成の説明をしたい人はいませんか。

田中正美
私は、軽井沢区長、ダイヤランド区長連名の請願書に対し、賛成の立場で話します。

今年9月13日に制定された条例の趣旨には、町民の財産である「眺望景観及び防災環境の保全と再生可能エネルギー発電事業との調和を図るため必要な事項を定め、もって災害の発生を防ぎ、町民の安全・安心で生活しやすい環境の保全に寄与することを目的とする」と書かれていて、町、事業者、町民それぞれに責務を与えています。

条例制定の背景としては、県がモデルガイドラインを平成30年12月に公表し、それをもとに制定しました。また、条例の目的に反する事業に対しては、立入調査の実施、指導、助言、または勧告及びその内容や事業者名などを経済産業省へ情報提供するとともに、公表することができることとなります。
また町長も、「町として軽井沢地区におけるメガソーラー計画への不同意の意思は今後も貫いていき、町長として町民の声に応えていくためにも反対していきます、町民、議会、行政が一体となって、できる限りの対応をしていきたいと考えています、町民の皆様のご理解とご協力をお願いいたします」と、ホームページ、「広報かんなみ」を通して発言をしてきました。

函南町議会としても、「町民の不安が消えないまま計画が進むことは見過ごせないし、函南町行政は軽井沢地区のメガソーラー建設反対計画に対し、土地利用事前協議において同意しないとする審議結果を事業者に知らせていて、函南町議会は、この不同意の意思表明を強く支持する。町民の生命・財産を守り、函南町の豊かな自然環境を次の世代へつなぐためにも、函南町議会は軽井沢地区におけるメガソーラー建設計画に対し断固反対する」と全会一致で決議しました。

さらに、区長会も、軽井沢区のメガソーラー反対に協力してくれ、署名を行ってくれました。まさに函南町が一丸となってメガソーラー建設を阻止するために奮闘しています。これに応えるのが議員としての責務ではないでしょうか。函南町民の命と安心を守るために、メガソーラー建設を阻止していく知恵と力の発揮が求められます。

反対していく手法はいろいろ考えなければなりません。条例を適用すれば100%阻止できるとは言い切れませんが、現時点では有力な手法であることも事実でしょう。今回提出された軽井沢区、ダイヤランド区両区長による請願については賛成すべきと考えます。
以上が賛成の理由の説明です。

議長(中野博)
ほかに、反対の説明をしたい人はいませんか。

長澤務
私は、軽井沢地区のメガソーラー計画に対して「函南町自然環境等と再生可能エネルギー発電事業との調和に関する条例」を使って、(計画に)同意しない決定を求める請願について、総務建設委員長の報告(請願の不採択)には賛同しますが、請願自体には反対の立場です。理由を説明します。

この軽井沢地区メガソーラー計画は、町から議会に対し、詳しい説明があったとおり、条例にある「事業を実施する場合に、条例にある届け出をし、その届け出に対し町長の同意が必要だ」という規定は適用できないと考えます。なぜなら条例で決められた「届け出の時期」は、「許認可等の申請 /届出の前までに」とあり、本年10月1日の条例施行時に本案件は、県に「許認可等の申請 /届け出」がされているため、「届け出の時期」を既に過ぎていて、届け出をそのまま義務づけることは、事業者に物理的に無理なことを強いることになります。

また、拡大解釈しても、今回の請願の趣旨が「条例の適用」であることから、私(長澤)は、総務建設委員長報告が適正だと判断します。したがって、条例にある「事業を実施する場合に、条例にある届け出をし、その届け出に対し町長の同意が必要だ」という規定も適用できないと考えます。

「函南町自然環境等と再生可能エネルギー発電事業との調和に関する条例」は、そもそも特定の事業者を対象に作られたものではなく、今回の軽井沢メガソーラー(事業者)に適用して判断した場合、その事業者に対して「届け出をさかのぼって求める」こととなり、その事業者にとって不利益を与えるものであるため、「法の不遡及」の一般原則に反します。また、行政権の乱用と判断されるおそれもあり、また、行政の中立性、公平性を逸脱することにもなるかもしれないので、適用は難しいという町当局の説明もあります。(私が)冷静に判断しても、町当局と同じように考えます。

軽井沢のメガソーラー計画については、令和元年5月30日付で町の土地利用事前協議は同意しないことを事業者に対して回答し、令和元年10月4日には議会で建設計画に対する反対決議が全会一致で可決されています。また、多くの町民からも反対署名の提出や反対運動も起きています。このように、既に議会は建設計画の反対の意思を示しているので、町に対して、この事業について反対する立場で対応を求めていくことはもちろんのこと、町民、議会、行政が連携し、協力していくことが必要であると私(長澤)は考えます。今後は、環境評価について町への意見書の提出や、その後の町に対しての個別申請など、(軽井沢のメガソーラー設備)設置に対して、不同意に基づく手だてがあります。

以上、軽井沢地区のメガソーラー計画に対して、「函南町自然環境等と再生可能エネルギー発電事業との調和に関する条例」により同意しないとする請願については、条例の適用は適切でないとして、反対の立場から説明をしました。

議長(中野博)
これで討論を終わります。
皆さんに確認します。これから採決をしてもいいでしょうか。
〔「異議なし」と言う人あり〕

議長(中野博)
異議はありませんでした。
これより請願書(請願 第3号)について、起立により採決をします。
この請願に対する委員長の報告は「不採択」です。
この請願を「採択する」に賛成の方は起立してください。
〔賛成者起立〕

議長(中野博)
起立した議員は少数です。
よって、請願書(請願 第3号)は委員長報告のとおり不採択とすることに決定しました。


意義のある議論を進めるためには、まずその判断材料となる情報が重要です。
有益な議論とは、まずどれほど多くの有益な情報を共有できているかに掛かっているかとも言えるでしょう。
それ無くして、ただ個人的感想だけで進める議論は幼稚です。

請願が審議された委員会では、請願の紹介議員が説明のために配ろうとした資料を一部の議員が受け取り拒否した挙げ句、数名に既に配っていた資料さえも「議員の平等」との理由で取り上げるという一幕がありました。(傍聴する住民の目の前で!)

そもそも、なぜ議員は町の意見をそのまま鵜呑みにするのではなく、その判断材料となった町の弁護士の意見そのものを聞こうとしないのでしょうか?

「議会だより」の間違いを指摘する

法的根拠を示さず「条例適用できず」?