エネルギーフォーラムが繰り返し報じてきた、静岡県函南町軽井沢地区を舞台にした大規模メガソーラー(総出力2万9800kW)の開発計画が中止されることになった。
(エネルギーフォーラム記者通信より)
→ https://energy-forum.co.jp/online-content/19025/
開発事業者のブルーキャピタルマネジメントは10月31日、同メガソーラー事業計画を廃止する旨の通知書を静岡県に提出した。
県は、計画地の確認などを行い、中止による支障がないことを確認した上で、申請を受理する見通しだ。
今後の焦点は、経済産業省資源エネルギー庁が同事業のFIT認定IDを取り消すかどうかに移る。
関係者などによると、同計画は2017年、中部電力子会社のトーエネックが立案。
再生可能エネルギー事業を手掛ける東京産業の斡旋で、ブルー社が18年4月にFIT認定IDを取得した。
ブルー社がパネル設置工事までを受託し、トーエネックが施主として事業を引き継いだ。これに対し、土砂災害などを懸念する地元住民が「計画は関係法令に抵触する」などとして猛反対。
21年6月30日、住民らは静岡県庁を訪れ、同計画の見直しなどを求める要望書を手渡した。
そして、そのわずか4日後、軽井沢地区から東へ数kmの場所にある熱海市伊豆山で大規模な土石流災害が発生し、災害関連死1人を含む28人が死亡する大惨事となったのだ。
これが反対運動に拍車を掛けた。
建設予定地の山のふもとには丹那小学校が・・・
その後、函南町長が計画への不同意を示したことなどから、トーエネックは計画を断念し、22年10月の中間決算で114億9000万円の特別損失を計上、翌23年1月に撤退を発表した。
これに伴い、ブルー社、東京産業との契約を解除。
事業にかかった費用の返還などを求める協議を続けてきたが、「交渉による解決は困難と判断」(トーエネック担当者)し、6月2日、既払い金の返還などを求める訴訟を名古屋地裁に起こした。
これに対し、ブルー社は「本件訴訟は一方的な内容かつ契約解除の理由がない」などとコメント。
東京産業も「(トーエネックが)主張する本件地位譲渡契約解除は理由がないと考えている」として、裁判を通じて契約の正当性を争う構えを見せていた。
こうした中で、ブルー社は事業の中止を判断した格好だ。
県に提出した事業中止通知書の中で、廃止の理由について〈施主が施主の都合で当方の反対を押し切り、解除を宣言し、履行不能に陥った為〉と記載している。
「経産省はFIT認定IDの取り消しを」
長年にわたって反対運動をけん引してきた全国再エネ問題連絡会共同代表(元大阪府警警視)の山口雅之氏は、エネルギーフォーラムの取材に対し、こう心境を語った。
「このたび、事業者が函南町でのメガソーラー計画を廃止することを知り、感無量です。
人生で初めて地元の方々と反対運動に関わり約5年半、言葉では言い尽くせないほどの苦難があった。
誹謗中傷にさらされ、心が折れそうになることもたびたびあったが、熱海土石流被害が二度とあってはならないとの思いから、仲間と励まし合いながら取り組んできた。
仁科喜世志・函南町長をはじめ町議や静岡県の県議、与野党の国会議員、エネルギー業界の有識者、メディア関係者など、さまざまな方々が住民の命と暮らしを守るためお力添えくださったお陰だ。
経産省は適切な判断の下で、この事業のFIT認定IDを取り消していただきたい。
今も、メガソーラーやメガ風力の開発計画で困っている地域は全国に多数ある。
函南町の事例を参考にしていただければ幸いです」