熱海土石流の検証資料加工事件

熱海土石流の行政対応を検証する重要な資料のカラー写真が、まるで黒塗りのような加工がされた状態で開示されていた問題について、川勝県政はその原因が不明なまま調査を打ち切ろうとしています。

まるで黒塗り、原因は不明

記者

静岡新聞の大橋と申します。
熱海の土石流の行政対応のことで毎度ですみません。

まず、行政対応文書の絡みで県が今年2月に追加で公表しているの「A283」という文書があるんですけれども、これは2007年の4月に逢初川の流域で濁りが発生して、それで県と市で合同で流域を調査したという内容なんですけれども。
この文書に関してですね、以前にもちょっとご質問させていただいていたんですけれども、もともとカラーの文書だったものを白黒で開示していたと。

もともとカラーだと説明しないまま白黒で開示していたんですけれども、さらにこの単なる白黒でコピーされてしまったものではなくて、コピー機では再現できないような形で黒く塗りつぶされている部分があったということなんですけれども。
この件に関しては土地対策課が調査をしているというふうに伺っていて、知事に対して調査結果を報告して納得していただいたというふうに伺っているんですが、知事に対してどのような調査結果が報告されているのか?それで実際、納得されたのか確認させてください。

川勝知事

これはですね、こういう説明を受けました。

不鮮明となった経緯等についてですけれども、まず公文書を不鮮明にするように加工したり、情報の隠蔽をするという意図は全くないというのが基本でありますが、当時の担当職員に確認いたしましたところ、まず出先事務所の職員がカラー文書をコピーして白黒化し、次に非開示部分を黒塗りし、PDFデータに変換し、このPDFデータを本庁担当課に送信するとともに、印刷した文書を本庁担当課に持参していると。

次に本庁担当職員が持参されたこの文書をそのまま開示請求書に交付しているということでございます。
担当職員には特殊な処理は行っていないとのことでございました。
カラーページに注意を払わないまま、複写作業を行っていたということでございまして、注意不足が原因ではないかというふうに受けとめております。

今はこれも全部カラーでそのままホームページで開示しているところであります。

カラーで公開されたA283
写真が黒く加工され公開されたA283

今はカラーで開示している。(だから、もういいだろう?)

記者

その担当職員というのは熱海土木事務所の職員ということでよろしいんでしょうか?

川勝知事

えーと、この名前までは・・・、まず一番最初は熱海ですね。

記者

別に固有名詞はいいんですけれども。
熱海土木事務所に確認したところ、少なくともその熱海土木事務所内では、コピー機を使ってそのような黒く加工されているような形に再現できないということは確認したということなんですけれども。
そうするとその画像処理されたと見られる作業というのは、どこでされていたのでしょうか?

川勝知事

うーん、まぁともかく・・・、という風にはいきませんけれども、この件については大変私も関心を持っております。
そして、まぁ、あの時期、400ぐらいのファイルを・・・、900ぐらいのファイルですかね。4000ページ分があったわけですね。
ですから、あの、ともかく、それをまとめて行政対応委員会の方にも提出しなくちゃいけないということでですね。

あの、その作業に追われていて、ですから、こういうことになったということを本当に申しわけなく思っておりますが。ともかく、気づいた以上ですね、これを開示してからのままに見せて、いかにこれがこの不都合な真実であってもですね、いや、不都合な真実であるがゆえに、それは隠してはいけないと。出すべきであると。これがもう基本的な少なくとも私の指示でございまして、その指示を守ってくれているというふうに信じながら今見守っているところであります。

調査を継続するか否かは曖昧模糊

記者

そうしますとその画像処理がどこでされたかということはまだ調査継続中という認識なのか、それとも、土地対策課に聞く限りは、知事が納得してくれたというふうに言われていたんですけれども、少なくとも納得したわけではないということですか、知事は?

川勝平太

まぁ、あなたの指摘とですね、職員の説明は若干齟齬がありますね。意図的にしたのではないと。しかし、意図的にしたのではないかというふうに大橋さんがおっしゃっている。
ですから、そこに齟齬がありますけれども、ともかく、その現物をどこかに隠したとかということではありませんので、とにかくすぐに見せるということで対応したということなので、それ以上のことができるかなという思いです。

記者

質問とかみ合っていないんですけれども、私が聞きたいのはその文書が加工された疑いがあるので、その作業工程を事細かに明らかにしてほしいということなんですけれども、その調査はこれからやるということなんでしょうか?

川勝知事

これは担当職員が変わりながらやっているもので、一人の職員が一人の部署が全部同じ形でやったというのでもなさそうなので、これは一応、私としては確認したという段階なんですが、まだ確認できていない状況かどうかは担当者・・・。

担当職員に何度も確認している、しかし原因はわからない

土地対策課長

土地対策課長

土地対策課長の福田でございます。
ただ、今のご質問ですが、我々もこれは担当職員には何度も確認しております。
そして、担当職員の今の説明につきましては、知事がおっしゃったとおり、それ以上のことはちょっと無いものですから、これ以上の調査というのはちょっとこれ以上できかねるという状況でございます。

記者

そうすると加工されたという部分の作業工程というのはわからないままにするということですか。

土地対策課長

あのー、今、知事もおっしゃられたとおり、もう既にカラーに代えております。
こちらも方としては対応できることは対応した。まず調査すべきことは調査しております。担当職員には何度も聞いております。
そして、彼らの(資料を)鮮明にするという第一の目的がありますので、鮮明にし終えているということですので、対応としては終えているというふうに考えております。

記者

知事に伺いたいんですけれども、これ以上調査はできないという。
もうちょっとちゃんと調べた方がいいかなと思うんですけれども、これだけ重大な案件ですから。

川勝知事

そうですね。これは一応ペンディングということでしょう。
やっぱり納得いっていないという(記者の)大橋さんの意見ですからね。ですから、わかり次第ですね、もう少し詳しいことがなぜああいうことになったのかということは、もし何か気づいていないことであるとかがあれば、それはその都度わかった時点でご説明申し上げるという風にするのがいいと思います。

記者

調査を引き続き続けるということでしょうか?

川勝知事

この件については私は非常に気になっております。はい。

記者

そこを曖昧にしないでいただきたいなということで。

川勝知事

はい。

検証される当事者が「検証結果に影響を与えません」

記者

もう1点。
この同じA283の文書の関連でなんですけれども、これは今年2月にホームページにその白黒の文書が公表されていまして、そのときに同時に県としてプレスリリースを発表していて、そのプレスリリースの中にこの文書が「行政対応検証委員会の検証結果に影響を与えません」という文言が書かれているんですけれども、僕は当時検証委員会の委員に確認した上で、これは出しているのだろうなと考えていたんですけれども、今回確認したところ、検証委員には確認せずに県として勝手な解釈でそういう影響がないということを書いていると、これは問題なんじゃないかなと思うんですけども知事いかがですか?

川勝知事

うーん、あのー、例示といいますか、ほぼ同じような事実が、あのー、別の文書で出ているので、ですから、これがないと全く事実がわからないというものではなかったということで、この検証委員会の方に説明するに及ばなかったというふうに聞いております。

記者

本来、これ検証すべき文書だと思うんですけれども、それは検証されないまま県の解釈で、当事者ですね、県は。当事者の解釈で影響はないというふうに判断して、それを発表するというのは、ちょっと問題があるんじゃないかと私は思うんですけども、知事は問題はないということですか?

川勝知事

今、この、県の特別委員会の方でですね、検証していただきまして、我々としては県議会で真摯に我々も気がつかなかった視点。例えば今のことですね。こうしたことについてご指摘をいただいております。

すなわち、法令の適用であるとか、あるいは県の組織文化であるとか、文書の保存の仕方であるとか、県としての連携だとか部局との間連携だとか、それからまた、いかにして被災者の方たちに支援をしていくかとしたことで、気がつかなかったところもありまして、それを対照表にしましてですね、そしてやっていなかったところについては、我々独自に検証すると。
我々独自で検証をしてならないようなものは、第三者委員会にやろうというふうに思っているんですけれども、これはこの件につきましては、県議会の特別委員会でご指摘いただいていることにも関わるであろうという感触は持っております。

記者

知事、以前の再検証のことに関しては、これまでの検証結果は維持するという尊重するという言い方もしていると思いますけれども、尊重した上でというふうに言われてますけども・・・。

川勝知事

はい、あのー、えー、検証委員会でですね。もう一度検証するという必要はないという一貫した考えを持っております。

記者

今回、このA283に関しては、本来検証すべき対象のものが検証されていないという文書なんですけれども、これはだから今までの検証結果をそのまま、ここは県の発表では影響がないとしちゃっているんですけれども、そのままにしちゃうというのはまずいんじゃないのかなと思うんですけれども知事は?

川勝知事

そうですね。
ですから、今、カラーのものが出ておりますので、これを対象にして検証するべきであるということになりましたら、県の議会の場でこれはお答えするというこれが筋ではないかと思っています。

記者

そうしますと、このA283を含めた形で、もう一度やり直しというかゼロベースでやるということなるんでしょうか?

川勝知事

見落とした部分があるのでですね、ですから、そこの件につきましては、この検証委員会でやったものとそうでないものに分けることができます。ですから、そうした分けた上で、そこに入っていないもの。例えば、今のような文書ですね。こうしたものも当然検討の対象になる可能性は極めて高いと思います。

記者

その中で、既存の検証結果に影響を与えるか与えないかというのも検証委員に確認しながら対応していく、そういう理解でよろしいでしょうか?

川勝知事

今度の県の議会でお答えするべきものであるというふうに考えております。

もう検証委員会は開かない

記者

検証結果に影響を与えないということを県が勝手に発表しちゃっているものですから、その検証委員の方にそれはもう一度確認するということでよろしいでしょうか?

川勝知事

検証委員会の方たちにおきましては、これは与えられた資料の中で、最善の最良の結果を出していただいたというふうに思っておりまして、そこにもう一度(検証委員会を)開いて持っていくという考えを持っていません。

記者

いや、このA283というのは検証対象が2006年以降の行政対応ということになっているんですけれども、これに当てはまる文章なんですよね。
それでかなり重要な事項が書いてあるのに抜け落ちていたというのは検証結果が変わる可能性がもし提出されていればですけれども、十分あったと思うんですけれども、この点はどうでしょうか。

川勝知事

可能性もあったかもしれませんね。
その辺も含めて、こうして論点が出ていますので、議会でしっかり対応していくというのが今の手続であると思っております。

記者

今のお話にも関連するんですけれども、先ほど熱海の土石流から丸2年ということで、いろいろ所感を述べられていましたけれども、この行政対応、技術関係も含めてですけれども、この検証作業に関しては、そういった必要とする情報が県から出されずに遅々として進まないというか、一旦結果は出たけれども、またやり直しという状況になっているんですけれども、なぜこういった、私は検証逃れだと思っていますけれども、検証逃れのようなことが起きてしまったのか?時間がかかってしまったのか?
これについて知事はどう考えていますでしょうか。

川勝知事

検証逃れのような意図はさらさらありません。
ですから、何事も隠さずに検証すべきことは検証するというそういう態度で臨んでまいりました。
そして、そうした中で十分ではないという特別委員会のご提言は、これは重く受けとめまして、砂防法とか、あるいはその都市計画法であるとか、あるいは森林法であるとか、さまざまな関連法案との関連はどうかといったような論点も出されております。

そうしたことも含めてですね。意見を出されてくださっているので、それを重く受けとめてこの議会で出てきた論点につきまして、議会でしっかりとお返しするというふうにしたいと思っています。

記者

検証逃れの意図はさらさらないということですけれども、実際に検証作業が遅れてしまっているわけですね。
知事が前に言われていたように、個人情報以外の全ての情報を出すということでやっていれば、こういう状況にはならなかったんじゃないですか。

川勝知事

そうですね。
カラーの件については気がついていなかったんですね、担当者も。
それで叱責を受けて気がついて、すぐにこれを皆様方に本来の資料のままに未加工でご提示するというふうにしたわけです。
ですから隠す意図はないということであります。

記者

反省はないということですか。

川勝知事

反省はそれはですね、ご指摘受ければ、それは真摯に受けとめてどういうふうにしたらそれが改められるかということを通して、その反省の念をあらわすということであります。

裁判所が求めれば公開する?
では気づかなかったら?

記者

最後もう1点済みません。
この土石流に関しては訴訟も起こされているということで、被災者の方が県を訴えられているわけですけれども、その訴訟の場に対しても今回公表されている文書の中での「D27」という文書はあるんですけれども、これは逢初川の隣の鳴沢流域で無許可開発が2003年に行われたというときの資料で、僕は鳴沢川流域というふうに今までは思っていたんですけれども、今回、黒塗りが県の方で解除していただきまして、そのエリアですね、無許可開発のエリアがわかるようになったんですけれども、これが鳴沢川流域だけではなくて、逢初川流域にも及んでいたと。
これは裁判所に提出されていないんですよね。

川勝知事

裁判所の方から文書の引き合いがありましたら、それはに基本的に黒塗りにしないでですね。全部お見せしているということでございます。
でも、今の鳴沢上流ですか宅地造成のところですね。今回、この検証委員会で調べたのは、逢初川の源頭部にかかわることであったのでですね。そこのところは言ってみれば対象外というふうにみなしたということであります。

記者

そこの黒塗りになっていて、範囲がわからない状態だと、逢初川の源頭部じゃないかなというふうに僕は思っていたんですけれども、いざ解除されてみたら、これは逢初川の源頭部が含まれているじゃないかということになっているんですね。
何でそういう不誠実な対応がとられてきたのか。裁判所にも提出すべき文書が提出されなくなってしまったのか。

川勝知事

裁判所の方から原告からのご要求とかございましてあれば、それはもう全てですね、それに応ずるというふうにしております。

記者

それは裁判所が気づかないから悪いというふうに聞こえるんですけれども、そういうことですか。

川勝知事

いや、そんなを言うつもりはありません。

記者

黒塗りになっていたらわからないと思うんですが、それはどうでしょうか。

川勝知事

黒塗りにした理由はちゃんとあると思うんですけれども、今この件についてこの場で答えることが僕はできません。

記者

ちょっとその辺、情報開示の姿勢は甘いんじゃないかなと思うので反省していただいて、そこはしっかり検証していただきたいと思います。

川勝知事
はい。