ヒヤリング不十分なまま、川勝知事「組織的関与ない」

熱海土石流災害に関連するカラーの行政文書が、黒塗り同然の加工で公開されていた問題について、静岡新聞の記者の質問にヒヤリングが不十分にも関わらず川勝知事は「隠蔽とはいえない」と言い切った。

(2023年9月22日、静岡県知事会見より)

記者
熱海の土石流の行政文書の問題について伺いたいんですけれども、先日来いろいろお話を聞いている中で、知事のご認識としては、これはもともとカラーの行政文書だったんですけれども、カラーだと気づかずに職員が白黒でスキャナーしてしまったという、だから問題ないんだという、隠蔽はしていないという隠蔽の意図はないということをおっしゃっていたと思うんですけれども・・・。

川勝知事
それは違いますね。
それは驚きました、今日の記事を見て。

記者
いろいろ調べてみたんですけれども・・・。

指摘されてすぐに直したから隠蔽ではない?
専門家は隠蔽を指摘。

川勝知事
いやいや、やりとりを見たわけです。
私はですね。不注意であったということは法務課長も言ったと、そして問題意識を持っていなければ気がつきませんと言ったわけです。
問題意識とはですね、その白黒の文字コードでスキャンしたと、そのときにこのこういう紙の一部のところにカラーがあるとすると。これその中で個人情報のやつを真っ黒に塗っていくわけですね。カラーのままカラーにすると、透けて見えるところがあるから。
したがってですね、白黒の文字コードにして黒くしたわけですね。
しかし、黒くなって不鮮明になるという問題意識があればですね、気がついただろう。
だから、そういう問題意識があればともかくも、なかったから気がつかなかったというのをですね。カラーであることに気がつかなかったというように、あなたが2度もですね、記事の中で書かれているのでですね。
これはまあ書き過ぎじゃないかと私としてはそういうこと言ったつもりはありませんので。
しかもですね、「気がつかなかったというのはカラーだということが気が付いてなかったということでよろしいですか」とあなたは質問されたように、私が「ともかく」と言い始めたらですね。
「そこだけ確認させろ」と。「カラーだということに気がついていなくて、職員がそういうことを注意不足だというふうに認識していると、知事はそう言っているのか」と。
「いや、私はちょっと正確には答えられません」と、「ただ見ていたから気が付かないであった場合もあるでしょう、ですから」って言ったら、「気がついてないというふうなことですか」というふうにあなたが言うからですね。「そういう場合もあるでしょう」ということを申し上げておると。
「1か0かという形で言えないのではないかと思っています」と、これが実際のやりとりです。

記者
私の認識と違うんですけれども、5月29日の記者会見の際には「カラーの文書だと気が付かなかったそうです」というふうに答えていらっしゃいます。

川勝知事
・・・まあ、ともかくですね・・・。

記者
それを根拠に「隠蔽の意図はなかった」ということも何度も繰り返しおっしゃっているんですけれども、そうするとカラーだという認識は持っていたというふうなことなんですか。県としては?

川勝知事
膨大な1,000枚以上のやつをコピーすると。そして個人情報は全部黒塗りをすると。その作業に追われたわけですね。
そして、カラーのものが不鮮明であるということの指摘を受けた。どうしたでしょうか。不鮮明なところであるということに気がついて、即ですね、カラーにして差し替えたわけです。これを隠蔽と言えますか。

記者
専門家の方に、私3人にお聞きしたんですけれども、それぞれ隠蔽だというふうにおっしゃっています。

川勝知事
それはですね。その一旦見えなくなったものを指摘されて、全部差し替えたということをあなたは説明なさいましたか?

記者
しました。

川勝知事
にもかかわらず、それは隠蔽だとおっしゃったんですか。

記者
その差し替えたことではなくて。その2011年10月、あるいは追加で開示された分も含めてですけれども、当初は見えない状態だった。読めない状態だったと。
で、こちらの指摘を受けて初めてそういうふうに差し替え修正をされたということですから、それは隠蔽と言えるという専門家の方のご意見もおかしくないのかなと思っていますけれども。

隠蔽でない根拠は当事者の説明のみ

川勝知事
気がついてすぐに不鮮明なところを不鮮明なものに差し替えてしたと。
そして職員に聞いてもらいました。
そうすると、「隠蔽の意図など全くなく不鮮明であるという指摘を受けて速やかに公表文書の差し替えを行ったところであります」と言ってます。

記者
そうすると、当事者の職員が「隠蔽しているつもりはなかった」と言っているのが隠蔽していないというふうに県が考える根拠ということでよろしいでしょうか?

川勝知事
はい。
しかも、その若い職員の上に立つ者がですね。そういう指示をしていませんから。
カラーのものがこうしろああしろと、一切指示していない。個人情報については黒く塗りなさいということだけですから。

記者
そうすると・・・。

川勝知事
そしてカラーの部分が不鮮明になった。
それを指摘を受けてすぐに鮮明なものに取り換えて公表したというのをですね。私はこれは到底隠蔽というふうに言うことはできないと思います。

記者
2021年9月21日付のメールですと、「カラーの文書についてはカラーで納品をお願いします」というふうにメールで、これは本部文書課の職員の方のメールなんですけれども。
その時点ではカラーだと認識していたんでしょうか?

川勝知事
だから法務課があるときにチェックしなくちゃいけませんから、ありのままのものをですね、出してくださいと法務課の方は法務課の方で、この個人情報にかかわることが表に出ないように、それで白黒に塗るというふうにしたわけですね。
そして、それを白黒のコピーにしてあったわけです。
ですから、それをカラーで出した方がベターですけれども、ともかくあの情報公開するためにやっているわけで、カラーでやらなかったから全部間違いだったと言うわけにはいかない。
そしてまたカラーがですね、見えなかった。白黒になって見えなかったから不鮮明だと言われてすぐにカラーに差し替えたと。

記者
2021年の10月の開示のときの話をしているので、後から差し替えたから隠蔽じゃないんじゃないかということにはならないと思うんですね。
そこは知事どうですか?

川勝知事
いいえ、私は隠蔽する意図がなく、かつそういう指示もなく、そして気がついてすぐに差し替えたと。
これがどこが隠蔽に当たるかと思いますね。
不都合な真実を隠していれば、隠蔽ですけども。

記者
そうすると、そのカラーから白黒に変えたという県としての意思決定というのはそこは何ですかミスだったというふうに考えますか?

川勝知事
それはですね、確かに不鮮明なものを出したというのがミスです。ですから・・・。

記者
不鮮明ではなく、カラーから白黒にしとことについてはミスだというふうに受けとめているんですか?

川勝知事
あのー、ほとんどの白黒で、文書の一部にカラー写真が入っているわけですね。

記者
いや、ほとんどは白黒というのはちょっと事実と違っていて、だいぶかなりの量がカラーでありました。

川勝知事
ふぅー(大きなため息)
ともかく、不鮮明なものが出たというのはですね。明らかに公開したことにならないのでですね。これは謝らなくちゃならぬと。
しかし、気がついてすぐに鮮明なものに変えたということです。

不十分なヒヤリング

経営管理部総務局長
まず、カラーの文書が出てきたというのはもちろん認識しておりますけども、カラーの文書でもらったというのはですね。カラーの文書はカラーで開示しなきゃいけないという考えではなくて、あくまでも現物により近いものをいただきたいからカラーでもらったのでありまして。
開示を実際するときには、今の公文書開示等取扱要綱というのがあるんですけれども、ここには「写しの交付の方法としては公文書が多色刷りであって開示請求者から多色刷りによる写しの交付が要請された場合は、多色刷りの複写機による当該公文書の通知を作成し、これを交付する」ということになっておりますで。
カラーの原稿を白黒にしたことそのものはですね、それがまずかったというふうには思っていないです。
ただ、もちろんですね。その白黒になったことによって、その写真の部分が見えなくなってしまったと、それはこちらの誤りでありまして、それについてはおわびを申し上げます。
カラーの原稿があったから、必ず全部カラーでこうしなきゃいけないという決まりはないということでございます。

記者
先程の先ほどの局長の話ですと、そうするとカラーから白黒にしたことはミスだということをその作業した職員二人は言っているというそういう理解でよろしいでしょうか?

経営管理部総務局長
そうですね、はい。

記者
職員二人は、カラーから白黒にしたのは・・・。

経営管理部総務局長
カラーからから白黒にした理由は、先ほどからもう前から言っているように、非開示箇所をしっかり非開示にするためにモード設定を変更したです。
その時に後ろの方に付いているカラーの写真の部分があんなふうに潰れてしまうっていうところまで思いが至らなかったということでございます。
そこは反省点で・・・。

記者
二人ともそういうふうに言っているということですか?

経営管理部総務局長
えーとですね、ちょっと待ってください・・・。
昨日、一人の職員に確認できまして、その者はそのように言っておりまして。
今日、また一人確認したんですけど、具体的にどういう指示だったか覚えてないとかですね、そういうような回答でございました。

記者
ちょっとそのヒアリングの詳細は後ほど教えていただけますか?
で、知事に伺いたいのはこれも4月からずっとこの問題について記者会見で質問させていただいていて、5月6月7月にも知事のところに担当課が説明に上がっていると思うんですけれども、そのときにこの私はこのヒアリングは全く不十分なものだったというふうに認識しているんですけれども、知事としてはそのタイミングでの調査結果を聞いて、それを了解したというふうに法務課長からは聞いているんです。
その都度、了解して追加調査の指示は出さなかったということでよろしいでしょうか‏?

川勝知事
問題点が明らかになれば調査します。
そして今回、最大の問題はですね。隠蔽したのかどうか。隠蔽の指示があったのかどうか。意図的にしたのかと全くそれがないということでですね、今は了解しております。

記者
そこをまだヒアリングの途中だと思うんですけれども、そこは推論でということになるんですか?

川勝知事
お一人から、そういうふうに隠蔽の意図はなかったと。
気が付かないで、つまりカラーがこの白黒の文字コードにした時に不鮮明になってそのことが問題になるというそういうことに気がつかなかったんですね。
ですから、それが気がついてすぐに改めたと、そして差し替えたということでございますので、その方がそれ以上に何ができたかなと思いますね。

組織的関与は調べない?

記者
組織的関与に関しては調べるていると?

川勝知事
組織的関与はないと。
何をもって、そして実際人がやっているわけですから。

記者
そこは推論ですか。

川勝知事
あ、いやいや。

記者
ヒヤリングはされているんですか?

川勝平太
組織的関与となると、例えば隠蔽の指示をしたとかってことですか?

記者
誰かから言われたということですね。
それを白黒にしなさいということですね。

川勝平太
私が担当者から聞いた限り、そういう指示をつまりあなたの言われる隠蔽のような・・・。

記者
担当者からということではなくて、ヒアリングでそこは確認しているのかということ。

川勝平太
ヒアリングで確認するべきは担当者でしょう。

記者
担当者は確認まだしていないですよね、十分に?

川勝平太
今、二人のうち一人は確認してもう一人とは覚えていないと言ったと。

記者
だからヒアリングをやる前からそういうふうに結論を言ってしまうということは不適切なんじゃないですか、知事?

経営管理部総務局長
すみません。
今、先ほど説明したの私が昨日聞き取ったものなんですけども、その前に1月の10日の時点で法務課がペーパーをまとめまして、知事のところに報告に入っております。
その時に関係職員に確認した。
ホームページ公表用のPDFデータを作成する際、白黒文字の画質設定でスキャナーした記憶があると、個人情報などの非開示箇所が透けないよう、確実に黒塗りすることが目的であって、隠蔽の意図によるものではなかったと、いうふうに調査をして、それを報告しているので、その時点で既に調査結果は出ていたということです。

記者
その報告資料はいただいているんですけれども、それを見ると、具体的に関係職員二人はやりましたとか、そういう書き方になっていないんですね。
具体性がなくてですね、ざっくりした書き方になっていると。
で、法務課長にもいろいろ確認したんですけれども、その辺は例えば独断でやったのかということについてもヒアリングしていないと言いましたし、裏写り防止本当にそういうふうに言っているのかということについても確認していないということでしたし、そのような状態で知事に報告をして・・・。

経営管理部総務局長
裏写り防止していることを確認したということが7月10日の報告に含まれてます。

記者
それでその裏写り防止を、要は黒くなっている状態というのをスキャナーした後に確認したのかということについては聞いていないというお答えでした。

経営管理部総務局長
スキャナーした後に確認したのか。だからスキャナーした後に要はその写真が真っ黒になってしまった後にということですか?

記者
黒塗り箇所ですね。非開示部分ちゃんと黒塗り透けて見えないかということを確認したのかということについては聞いていないということだったんですね。

経営管理部総務局長
聞いてないというか、それはその現物を見て黒塗りがしっかりされていればできたんだなというふうに判断したんだと思うんすけど。

記者
そこはだからしっかりヒアリングをした上で結論を出すべきだと思うんですけれども、その辺、知事にもう一度せてください。

経営管理部総務局長
まあ、あの・・・。

記者
知事に伺いたいんですが。

川勝知事
ヒアリングの大筋からですね、この件についての経緯はほぼ明確だなという風に思っています。
ありのままの文書をまず法務課の方に出すようにと。法務課の方では、そこでですね、個人情報を外に出ないように黒塗りをすると。
そのときに白黒の文字コードにして、そしてコピーをしたと。
その職員はそのカラーのところが不鮮明になるということに、それがまた問題になるということに気がつかなかったのは明らかに誤りです。
ですから、結果的にこうした形でですね、わかった以上、ご本人も、即それをですね、知ってカラーでコピーし直して差し替えたと言っているというのが大きな話の筋ではないかというふうに思っているわけですが。
ですから、聞き取りの内容もその線の中でありますので、何かその大きな筋が変わるというふうには思っていません。

記者
ヒアリングを終わる前に結論を述べることについては問題ないというふうに理解してよろしいですか?

川勝知事
大方のそのこの件についての流れ、カラーコピーが、カラーのものが白黒になり、不鮮明になり、そしてそれを気がついてすぐに明らかな形になるものに取り替えたということですね。だからこれは隠蔽とは言えないというそういう私は、えー、まぁ・・・、思います。

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