熱海土石流巡る開示文書の判読不能問題

業務上過失致死の証拠隠しが疑われている案件で、担当した当事者の調査結果を「全面的に信頼している」という川勝平太知事の判断は正しいのだろうか?

2023年9月5日、静岡県知事定例記者会見より。

川勝知事はいつ問題を把握したのか?

記者
かねてから質問しています、熱海の土石流の行政文書の問題について、何点か伺いたいと思います。
法務課の方からいろいろと説明をいただいていまして、これはなぜ判読できない状態になったのかということに関しては、法務課の複写機でデフォルトモードを変更した設定をして白黒にして濃度が濃くなっているというご説明をいただいているんですけれども、この件については知事はいつどういう状況で把握されたのか。
設定変更をしていたということを職員が設定変更したということについて、知事はどういう状況でどの時点で把握されていたんでしょうか?

川勝知事
これを大橋記者の指摘がきっかけだったんじゃないかという記憶がありますが。

記者
それはいつですか。
私は3月、4月から質問をさせていただいていますけれども。

川勝知事
私がそれを知ったのはいつかということですか。
そのときだと思いますよ。

記者
4月から設定の話を・・・。

川勝知事
それをですね、今、正確にもしその前に報告を受けていた可能性もありますけども。
えー、ご質問いただいてからこの問題を認識したということです。

設定変更の説明をなぜしなかったのか?

記者
この場ではそういう話を説明されていなかったと思うんですけれども、今まで説明されてこなかったのはなぜなんでしょうか。

川勝知事
いや説明してきたと思いますが、質問に対しまして。

記者
その職員二人は設定を変更したという話を説明されていなかったと思うんですが。

川勝知事
設定を変更した?
あのー、どういう設定をどこからどういうふうに変更したんですか?

記者
複写機の設定をスキャナーするときに、白黒文字モードという白黒で濃くなる設定に変えていたという説明なんですが。

川勝知事
ああ、これはあの、写しが下に出てですね。特定の個人情報等々が判明する場合があるので、そういう場合にしっかり黒塗りをするんだという説明を受けていたように記憶しております。

職員が設定変更した動機は?

記者
職員二人がそういうふうにやったというふうに聞いているんですけれども、その経緯について、なぜそのカラーのものを白黒にしたのかというふうに報告を受けているんでしょうか?

川勝知事
そこのところだけ特定していたんじゃなくて、たくさんのものを複写して、そして資料をつくらなくちゃならないという作業の中で、それが起こったのだというふうに思います。
そういう風に報告を受けております。

記者
5月の記者会見のときには、カラーだというふうに気づかなかったというふうな説明を知事されていますけれども、それは正しかったんでしょうか。

川勝知事
もともとカラーであったという認識も、その前後にいただきまして、あるいはあなたの方から最初からカラーだったものが黒白で出てきているというというふうに言われていたら、そのときにそうだったと思います。
そのときに知ったと思います。

記者
もともとカラーのものは当然あったんですけれども、それを気づかないで作業した結果、白黒状態になったという説明だったと思うんですけれども、最近、法務課が説明してくれている内容とだいぶ違うんですけれども。

川勝知事
法務課、来てますか?

当初の間違いを認める法務課長

法務課長
法務課長の森でございます。
この不鮮明になった問題に関してですね。最初はコピーの差異が原因だと思いまして、不鮮明になったという説明をしておりました。
で、6月の末か7月の頭ぐらいに業者さんの方からコピー機でスキャナをかけるときに、原稿の種類を白黒文字モードにして、カラー写真を読み込むと不鮮明になることがあるという情報を得ましたので、それに基づいて、コピーじゃなくてスキャナの作業が原因だということで調査をしましたので、当初はちょっと私の方のコピー機に対する知識が足らず、適切でない説明を知事、もしくはこの場で差し上げたことはまことに申しわけございませんでした。

記者
当初は白黒コピーだをしていたというご説明されていたと思うんですけれども、それは担当した職員にきちんとヒアリングした結果だったんでしょうか?

法務課長
うちの機械が白黒の機械なので、白黒だということで、最初は認識しておりました。

記者
それは職員に聞いたら?

法務課長
私が総合的に判断いたしました。

担当者には聞いていない?!

記者
その当時は担当していたその二人の職員というのは、どういうふうなことを言っていたわけですか。

法務課長
当時は最初は聞いてません。
私の方で推論して、確かにコピーは経験的に何度もかけると見にくくなるという経験はございましたので、それが原因であろうと。

記者
そうすると、当初はヒアリングもせずにその調査結果を発表していたということですか。

法務課長
調査結果は発表はしていないと・・・。
大橋さんには説明しましたけど、発表という形ではしてなかったと思うんですけど。

記者
ここ(会議録)に、5月の記者会見でそういうふうな説明をされているんですけれども。

法務課長
私は5月はしていませんと思いますけれど、私がしてます?

記者
記者会見の記録で残っているんで間違いないと思うんですけど。

法務課長
ああ、そうですか、すみません。
あの、そのときは当然、私の経験的なところでお話をしたと思います。

記者
その担当の職員二人に対してヒアリングをしたのはそうするといつからなんでしょうか。

法務課長
その7月くらいだと思います。

動機をはぐらかす法務課長

記者
で、その職員は理由ですね。なぜそういうふうな白黒のモードを使ってしまったのか。カラーで出てきた文書を白黒にしたのかということを言っているんでしょうか。

法務課長
私がそのとき調査しなければいけないと思ったのは、なぜ写真が不鮮明になったということで、業者さんの方から白黒文字を原稿の種類を白黒文字として設定してスキャナをかけるとそうなると聞いておりましたので、白黒文字でスキャナーしましたかという聞き方をしました。

記者
聞き方はそうなんでしょうけれども、何と答えたのか教えていただけますか、回答信知りたいんです職員の。

法務課長
そういう記憶がありますだったと思います。

記者
なぜそういうことをしたのかについては?

法務課長
聞いていません。

記者
なぜ聞かないんですか?

法務課長
いや、だから先ほども申し上げましたけど、なぜ不鮮明になったのかということを私は調べていたので、白黒の文字モードでやると文字の原稿種類を白黒文字でスキャニングをすると、写真が不鮮明になると聞いていましたので、じゃあ「そういうことがありましたか?」「ありました、そういう記憶がございます」ということであれば、それをやったのが原因ということをご報告すればいいとというふうに、私は当時考えていたはずです。

記者
今の時点の見解で構わないんですけれども、なぜ職員がそういうことをやったのか。職員は何というふうに答えているんですか。

法務課長
今の時点で総合的に判断をいたしますと、情報公開において黒塗りするところはあるんですけれども、そこには個人情報とか企業さんの重要な情報が入っておりまして、それを外に出すことはまずいということがございまして、それが、裏写りで浮き出して、その結果を見た人がわからないようにするために消したところなんですね。
何が書いてあったかが出ないようにするために一生懸命やって、その結果、ちょっと写真の方まで気が回らなかったとというふうに、私は心証を形成しております。

記者
職員はそういうふうに答えているんですかね?

法務課長
私がそう思っています。

記者
職員は何と答えているんです。

法務課長
職員は・・・。私がそう思っていますので、この調査は、なぜ、なぜ不鮮明になったかということなので、そういう調査をしておりますので。

情報を隠す意図はなかった
その根拠は県の基本方針

記者
知事すいません。
そこのところはヒアリングが不十分だと思うんですが、そういったことで県として事実認定してしまっていいのか、どうでしょうか。

川勝知事
うーん、まずですね、情報を隠す意図はなかったというのが一貫していると思います。
結果的に白黒になったので、本来カラーでやったらばわかった情報が出てこないとということですが、これがカラーであったということがわかった時点で、すぐにホームページにも含めてこれをカラーにして皆様方にお知らせすると、同時にそこに個人情報なり、企業の特定できるようなことがあってはならないので、その点でそれがカラーにした場合でも大丈夫かどうかということはもちろん確認した上で公表したのではないかというふうに私は受けとめております。

記者
知事が隠すの意図はなかったというふうに判断した根拠というのを教えていただけますか?

川勝知事
これは県の基本方針として皆様方が共有しているものと私は確信しています。

記者
共有しているから隠す意図がなかったという、その理屈がよくわからないんですけれども。

川勝知事
ご本人たちからも隠す意図はなかったと情報公開法に基づいて開示されるべき要求されたものについては、それを開示するとという基本的に、それに忠実に対応してきたと。
したがってそれは隠すということとは違う、開示するというそういう目的に沿って仕事をしたというふうに聞いております。

記者
そうするとカラーの文書だという認識がなかったんですか。本当にそういうふうに言っているんですか?

川勝知事
いや聞いていませんが、ともかくカラーの・・・。

記者
それを聞いた方がいいんじゃないかということなんです。

川勝知事
基本的にカラーの資料であったということが、あなたのご指摘によって分かったので、これはすぐに問題ないものであるならですね、皆さんにわかるような情報を提供するのが情報開示法の趣旨ですから、そうしてくださいということでそうなったということです。

記者
そのカラーの文書と認識しながらなぜ白黒でそういう濃くなるようなモード設定をしてやったのか。
そこが非常に不自然なんですが、知事はそういうふうに思わない。

川勝知事
いや、私の今のこの課長のご説明のとおりであろうというふうに思っております。

記者
それは何を根拠にしているんですか。ヒアリングをしていないのに、何で判断するんですか、そういう風に?

川勝知事
まあ、ですから、なんで黒になったのかということで、そのコピーの仕方、これが原因だったってことがわかって、実際にそういう風になるということもわかって、それならばそれは原因はわかったと。
じゃあ、今度のカラーのコピーは情報を開示していけないものなのかどうかということがポイントになって、それは問題ないということを調査した結果、個人情報がそこに含まれていない、地番もですね、別に特定できないということであれば、それを開示できるということで開示に至ったということで。

わかった時点で開示する
つまり、バレたら開示する?

記者
本来開示すべき情報が開示されていなかったという非常に重大な案件だと思うんですけれども、そういう認識はないのでしょうか?

川勝知事
いやですから、それがわかった時点で開示するということにしたわけです。

記者
わかった時点で開示しても、この1年半以上こういう状態だったわけですよね。
検証作業や訴訟に影響を与えているわけなんですけども、そこの責任は感じないんでしょうか?

川勝知事
ともかく、わかった時点で正しい方向に舵を切り返すとこと以外に方法はないと私は思っています。

記者
法務課からは謝罪の言葉があったんですけれども、知事としては謝罪はしないということですか。

川勝知事
いや、これはあの大橋さん一生懸命取材されているので、取材に支障を来したことに対して組織として大変まずかったというふうに思っています。

記者
取材に支障をきたしたのもそうなんでしょうけれども、被災者や遺族に迷惑がかかっているという認識はないんでしょうか?

川勝知事
いや、被災者や遺族に対してですね。大迷惑がかかったと思いますよ。
まずはああいう悲惨な惨事になったわけですから、それはもう基本中の基本です。
ですから、いかにして残された者が元気に生きていけるかということ、これをするのが我々の義務だということで。
安全を講じつつ、堰堤やあるいは残っている土砂を取り除き、そして二次災害にならないようにと、こういうようなの炎天下ですから、そうした中で我々は自分たちの気持ちを仕事に変えてやってきたということですね。
ですから、何か機械的にやっているのとは違いますので、その一つの文章がですね。全てのこういうものの一つの唯一の原因だとというふうには思っておりません。

記者
改めてちょっと確認ですけれども「ヒアリングをしないまま隠す意図がなかったと判断している」そういうことでよろしいですか?

川勝知事
目的意識があればヒアリングしたでしょう。
だけれども法務課長が申し合わせていますようにですね。なぜそこは白黒になっていたかということの疑念を聞いて、そしてそれがわかったということで、その疑念は解消されたと。

記者
そうすると、知事の所見をお聞きしたいんですけれども、その作業した職員二人が独断でやったというふうに見ているということでよろしいでしょうか。

川勝知事
私は一生懸命やっていたと思いますね。
ともかく、情報開示が来て、それに真正面から答えるということで、多くのこの文章をコピーするなりしてですね。そして、その個人情報が漏れないように、特定の企業が特定されないように地権者がわからないように、そうした作業が基本的に開示する場合にどうしても必要ですから、そこに重点を置いてやっていたんだというふうに思っております。

担当者の判断か否かは曖昧模糊

記者
いろいろ専門家にも複数の方に伺っているんですけれども、現場の職員がカラーの文書を白黒でというのを独断で判断することはあり得ないだろうというのが専門家の一致した見解なんですけれども、知事は独断でやったというふうに見ているということでよろしいでしょうか?

川勝知事
まあ、あの、意図的にやったのでは全くないと思っています。

記者
独断でやったのかどうかを聞いているんですが。

川勝知事
広い意味でこの資料について地番ですね、そうしたものがわかると具合が悪いというふうに思っただろうということは想像がつきますね。
ですから、それがわからないようにするためにということがあったかもしれませんが、しかしながら沢山の資料を処理する中で、そこの資料にD27でしたか。その資料に特定するような形での意識を持っていなかったと思います。

記者
ごめんなさい確認ですけれども、担当職員のヒアリングが不十分な中で、これで職員二人の責任に押しつけるようなことがあってはならないと思うんですが、知事は二人が独断でやったと判断しているということで・・・。

川勝知事
二人は一生懸命やったと思っていますね。

記者
独断でやったかどうかということで。

川勝知事
独断という言葉が適切であるとは思いません。

記者
そうするとほかに関与している者はいるという?

川勝知事
いや、そういうふうな邪推は全くありません。

職員を信頼しているからヒヤリングしない?

記者
こういう場合は邪推といいますか、まさにほかの関係職員に指示した可能性も含めてしっかりヒアリングして調べるべきだと思うんですが、そういう考えはないんでしょうか。

川勝知事
今、この間、法務課長ほか、担当者と何度か折に触れて議論しておりますけれども、それなりのこの件につきましては何か情報を隠すとか、それから意図的に白黒にしたとか、そうしたことはなかったという、暫定的ではありますけれども、そういう認識を持っています。

記者
この開示作業自体が、その設定変更した二人の方も含めて6人の法務課の職員がかかわっているというふうに聞いていて、そのうちの一人は課長だというふうにも聞いているんですけれども、それでも当事者がヒアリングした結果をヒアリングの不十分な中でですけども、当事者からの報告を信用して知事は判断する。組織の判断をする。
そういうことでよろしいですか?

川勝知事
そうですね、基本的に職員を全面的に信頼しています。

記者
わかりました。ありがとうございます。

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