県知事意見「調整池の基礎となる地盤が沈下し施設が破損するおそれがある」

林地開発許可は安全を担保するものではない

環境アセス方法書に対する県知事意見が公開されました。

この中で「土地の安定性」の項目で、「急傾斜かつ脆弱な地質」「活断層が存在」「調整池の基礎となる地盤が沈下し施設が破損するおそれがある」等々の懸念が記載されています。

これは林地開発許可が安全を担保するものではないことを知事も認めていると言えます。

これまで事業者が何度となく繰り返してきた「安全は開発許可で全て担保されている」という説明が間違いであることが明らかとなりました。

参考記事
方法書説明会(4)「環境アセスの目的とは?」

現実、林地開発許可を得た全国各地のメガソーラーが豪雨などにより崩落事故を起し住民の生活に被害を及ぼしています。
幸い、人命が奪われる事故は発生していない様ですが、函南町の軽井沢地区に建設予定地の直下には集落や小学校などがあり、ひとたび土砂災害が発生すれば、多数の人命が奪われます。

「(仮称)函南太陽光発電事業環境影響評価方法書」に関する知事意見
静岡県 令和3年6月
 
はじめに

(仮称)函南太陽光発電事業(以下「本事業」という。)は、函南町軽井沢地区において、約65.3haの敷地に98,237枚の太陽光パネルを設置し、総出力29,800kW(交流)を発電する太陽光発電所の建設事業である。
事業実施区域は、風光明媚で知られ、多くの観光客が訪れる十国峠1の西側に位置し、箱根連山に沿って指定されている富士箱根伊豆国立公園第2種特別地域を含む森林区域内に計画されており、事業実施区域及びその周辺には、砂防指定地2や、昭和5年(1930年)11月26日に、北伊豆地震3を引き起こした丹那断層群とされる軽井沢断層、滝沢断層、滝地山断層及び滝地峠断層が分布している。
そして、事業実施区域の近隣及び流域には、町全体の約6割を占める約10,000世帯(約23,000人)が居住しており、過去には水害や土砂災害の被害を受けている。
平成10年(1998年)8月30日には、台風第4号の影響による豪雨が発生し、丹那雨量観測所において総雨量288mmを記録した。また、令和元年(2019年)には、台風第19号の通過に伴う豪雨により、丹那雨量観測所において総雨量537㎜を記録している。
 
これらの豪雨により、畑毛地区等の平坦部では柿沢川等の氾濫による浸水被害が発生し、丹那地区、畑地区等の山間部では多くの土砂崩壊が発生したため、住民生活に大きな支障を及ぼすこととなった。
このように、函南町は過去に災害による大きな被害を受けていることから、地域住民や函南町内関係団体からは、本事業の実施が住民の生活環境や雄大な景観などの自然環境に重大な影響を及ぼすおそれや、大規模な森林伐採が災害発生リスクを高めるおそれ、想定外の大雨や地震時における防災調整池の容量の不足や破損が生じるおそれなどを理由に、多くの不安の声が寄せられている。
こうしたことを踏まえて、函南町長からは、「豊かな自然環境からの恩恵を受け、生活を営んでいる住民の生命と財産を守るためにも、現在の本事業計画について到底容認することはできない。」との意見が述べられている。
 
そこで、本事業の実施が環境に及ぼす影響を回避し、又は極力低減するため、こうした地域特性や地域住民等の意見を踏まえ、適正に環境影響評価を実施するとともに、環境影響評価準備書(以下「準備書」という。)では、太陽光パネル、パワーコンディショナー4、空調機器等の設置計画や環境影響の調査方法、予測及び評価の内容等を具体的かつ明確に示すことが求められる。
以上のことから、今後、事業者が実施する環境影響評価の実施項目及び準備書に記載すべき事項等について、意見を述べるものである。
 
Ⅰ 全般的事項
 
1 調査、予測及び評価を実施する項目の選定
 
本事業は、県環境影響評価条例に基づく手続であることから、県環境影響評価技術指針(以下「技術指針」という。)を再確認した上で、調査、予測及び評価を実施する項目を選定し、項目ごとに適切な範囲、方法にて調査等を実施すること。また、技術指針に規定する標準項目や方法以外に、地域特性や事業特性から調査等が必要と考えられる項目等については、「その他」として選定し、調査等を実施すること。
大規模な森林伐採や土地の改変を伴う造成工事等では、雨水の流出量の増加や土砂の移動、流出によって、生活環境や自然環境に大きな影響を及ぼすおそれがあること、及び近年の豪雨による浸水被害や土砂崩壊により大きな被害を受けている地域住民等からも、本事業の実施に対して、多くの不安の声が寄せられていることから、技術指針に規定する「土地の安定性」、「地下水の変化」、「河川の変化」及び「土壌、土砂の流出、堆積」については、事業実施区域の地域特性を反映した調査、予測及び評価を最新の知見に基づき、必ず実施すること。
 
2 地域住民等への丁寧な説明
 
環境影響評価方法書(以下「方法書」という。)に対し、地域住民等から1,400件を超える意見が出されたことは、本事業に対する重大な懸念や不安の表れであり、函南町長からも、「函南町民や地域住民及び町内関係団体等に対して、事業説明等がまったく不十分であり理解されていない状況で、不信感だけが存在しているのが現状である。」との意見が述べられている。
本事業を円滑に実施するためには、地元の理解と協力を得ることが不可欠である。引き続き、事業説明会の場を活用し、地域住民等に対し丁寧に説明すること。その際には、環境保全に関するデータや情報を最大限公開し、透明性の確保に努めること。
 
3 準備書作成に当たっての留意事項
 
準備書の作成に当たっては、最新の知見や先行事例、専門家の助言、地域住民の意見等を積極的に取り入れるとともに、具体的、客観的な情報を示し、分かりやすい記載に努めること。
 
また、環境影響評価の項目並びに環境影響の調査、予測及び評価手法に影響を及ぼす新たな事実が判明した場合には、項目の見直しや追加を行うこと。
 
4 その他
 
環境影響評価審査会での審議を踏まえ、評価項目の追加をはじめ、方法書の内容を修正する必要が生じた箇所については、審議内容が的確に反映されていることを相互に確認するため、変更後の資料を作成し、調査を実施する前に提出すること。
 
Ⅱ 個別事項
 
1 大気汚染
 
資機材や残土を運搬する工事車両(以下「工事車両」という。)の通行に伴い、粉じんが発生するおそれがあることから、事業実施区域周辺だけでなく、工事車両の走行ルート沿いにおいても交通量を勘案した調査、予測及び評価を実施すること。
工事の実施に伴う建設機械の稼動及び工事車両の通行により、排気ガスの発生が見込まれるため、調査等の項目に二酸化窒素及び浮遊粒子状物質5を追加すること。
 
2 騒音及び振動
 
事業実施区域周辺の住宅地は、騒音及び振動の発生が少ない静寂な場所であり、工事車両の通行及び建設機械の稼働に伴う騒音及び振動は、近隣の住民の生活環境に影響を及ぼすおそれがあることから、事業実施区域の近隣の住宅地に調査地点を追加し、調査、予測及び評価を実施すること。
工事車両の通行に伴う騒音及び振動の調査等は、使用する道路の交通量を踏まえて実施すること。
工事車両の通行に伴う騒音の調査地点は、騒音に係る環境基準の評価マニュアル等を踏まえ、川の音等が聞こえる場所、音が反射する場所及び道路のカーブを避ける等、周囲の状況を十分理解した上で適切に設定すること。
パワーコンディショナー、空調機器及び変圧器から発生する騒音や低周波音が近隣の住民の生活環境に影響を及ぼすおそれがあることから、周囲への影響や対策などに関する事例や知見を収集し、それらを踏まえて予測及び評価を実施すること。
 
3 水質汚濁
 
濁水の流出は、河川に生息する底生生物や生態系に影響を及ぼすおそれがあることから、沈砂池の効果を検証した上で、排水される濁水濃度の予測及び評価を実施すること。
大規模な森林伐採や土地の改変を伴う造成工事により発生する濁水は、大雨時に大量に発生することから、濁りの原因物質である浮遊物質6の発生量について、大雨時を含め調査、予測及び評価を実施すること。なお、安全に調査を実施するため、自動観測機器の設置等も検討すること。
工事で発生する雑排水やコンクリートの使用時に生じるアルカリ排水により、排水先の河川においてpHが変化するおそれがあることから、排水が及ぼすpHの変化について、調査、予測及び評価を実施すること。なお、工事等に伴い発生する排水のpHは、排水先の河川と同程度となるように対策を講ずること。
調整池が設置されることにより、事業実施区域からの雨水が一定期間調整池内に貯留することで、pHが変化するおそれがあることから、雨水の貯留によるpHの変化について調査、予測及び評価を実施すること。
太陽光パネルが台風等の強風や劣化により破損し、有害物質が流出するおそれがあることから、準備書では、使用する太陽光パネルの品質を明らかにするとともに、必要に応じて維持管理方法や流出防止対策を記載すること。
稼働後の維持管理において除草剤を使用する場合には、下流河川の水質を悪化させ、人や家畜、河川生態系に影響を及ぼすおそれがあることから、調査、予測及び評価を実施すること。
水質汚濁の調査地点は、本事業の実施に伴い発生する濁水が他の河川からの流水と十分に混合し、濁りが低下したことを把握できる下流部とし、その影響と比較するため、上流部にも調査地点を設けること。
水質汚濁の原因となる物質について調査、予測及び評価を実施した結果、その影響が下流まで及ぶ場合には、水生生物や水田雑草群落7の生息、生育環境に及ぼす影響について調査、予測及び評価を実施すること。
 
4 貴重な地形及び地質
 
伊豆半島ジオパーク8のジオサイト9となっている丹那盆地の地形を形成した丹那断層は、世界に先駆けて調査された著名な断層であることから、事業実施区域内における丹那断層の地形の改変量について、調査、予測及び評価を実施すること。
 
5 土地の安定性
 
事業実施区域には、急傾斜かつ脆弱な地質があり、また活断層が存在しているという地域特性を踏まえ、本事業の実施が傾斜地や盛土の安定性に及ぼす影響や構造物を設置する地盤の強度を土地の安定性として調査、予測及び評価を実施すること。
なお、環境保全措置として設置される調整池の基礎となる地盤が沈下し施設が破損するおそれがあることから、土地の安定性の予測及び評価に当たっては、詳細な地質調査を実施するとともに、森林伐採に伴う雨水の浸透、流出及び蒸発散といった水の循環の変化の影響も併せて検討すること。
土地の安定性の評価に用いる円弧すべり面を想定した安定解析10等は、事業実施区域内の切土や盛土を行う箇所で実施すること。また、事業実施区域は急傾斜である上、地質は脆弱なことから、土地を改変せずに森林を伐採する箇所や太陽光パネルを設置する箇所でも傾斜地の崩壊を発生させるおそれがあることから、これらの箇所においても安定解析等を実施すること。加えて、使用した地質に関する情報や解析の結果を分かりやすく準備書に記載すること。
 
6 河川、地下水の変化
 
大規模な森林伐採や土地の改変を伴う造成工事による雨水の浸透量や土壌の保水力の変化は、事業実施区域を水源とし、地域で利用されている河川や地下水の水量に影響を及ぼすおそれがあることから、河川や地下水の水量の変化について、調査、予測及び評価を実施すること。
本事業の実施に伴い、河川の流量が変化するおそれがあることから、河川の流下能力を把握した上で、流量の変化について調査、予測及び評価を実施し、その内容や根拠、環境保全措置について、分かりやすく準備書に記載すること。
また、流量の変化の予測により、下流まで影響が及ぶことが明らかになった場合には、ため池である軽井沢池、牧場池及び柏谷池や柿沢川下流、狩野川まで調査、予測及び評価の範囲を拡大するとともに、水生生物を含む河川生態系に及ぼす影響についても調査、予測及び評価を実施すること。
 
7 土壌、土砂の流出、堆積
 
大規模な森林伐採や土地の改変を伴う造成工事により、事業実施区域の地表面において雨水による侵食が発生し、土砂が流出するおそれがあることから、森林伐採後、造成工事中及び工事完了後の土壌、土砂の流出、堆積について調査、予測及び評価を実施すること。
環境保全措置として実施する緑化を計画するに当たっては、土壌、土砂の流出量が低減されるような播種や植栽の方法を検討するとともに、ニホンジカによる食害防止方法を検討すること。
 
8 動物、植物、生態系
 
(1) 全般
 
希少動植物の調査については、調査範囲(湧水及び湿地の位置を含む。)、調査期間(工事中も含む。)、希少動植物の環境保全措置を具体的に準備書に記載すること。
事業実施区域及びその周囲での目撃情報や文献により、希少動物であるハコネサンショウウオ、モリアオガエル、カワネズミ、オオタカ、オオワシ、ハヤブサ、サシバ、ハチクマ、ハイタカ、サンコウチョウ、ミゾゴイ、ノビタキ、フクロウ、アオバスク、ウズラ及びコノハズクのほか、地域の固有植物であるアマギツツジの存在が確認されていることから、これらの生息、生育状況の調査を行うとともに、本事業の実施が及ぼす影響について予測及び評価を実施すること。
静岡県レッドリストには、平成29年(2017年)からクモ類、菌類(キノコ)が追加されていることから、これらについても調査、予測及び評価を実施すること。
大規模な森林伐採や土地の改変を伴う造成工事時だけでなく、稼働後の施設管理においても動物への影響に配慮すること。
本事業の実施に伴う濁水の発生や太陽光パネルの輻射熱11が、動物、植物及び生態系に影響を及ぼすおそれがあることから、現地調査又は事例や知見の収集を行い、それらを踏まえて予測及び評価を実施すること。
パワーコンディショナーの電磁波が動物に影響を及ぼすことが懸念されることから、事例や知見を収集し、それらを踏まえて予測及び評価を実施すること。
 
(2) 動物

① 鳥類

猛禽類の調査地点は、広範囲を見渡せるような場所を選定するとともに、調査時間には、活動が活発となる時間を含めること。任意観察調査では、発電施設の設置範囲をくまなく踏査すること。
文献調査の結果から、事業実施区域には、ミゾゴイ、ヤマシギ及びフクロウ類など夜間、早朝に行動する種が生息している可能性があることから、夜間調査やセンサーカメラ、レコーダー等を使った調査を検討すること。
事業実施区域内に、オオタカ、サシバ等の希少猛禽類の営巣が確認された場合には、2営巣期以上の調査を実施するとともに、巣とその周囲の森林を残置森林とするよう検討すること。
また、稼働後の施設管理において、抱卵期から育雛期にかけての営巣地付近での保守点検は避けること。
渡り鳥の飛来状況を確認するとともに、太陽光パネルへの衝突事故について事例収集を行い、パネルの設置が鳥類に及ぼす影響について予測及び評価を実施すること。
 
②魚類、両生類、爬虫類、哺乳類及び昆虫類
 
冬季には、魚類は活性が低下し、水生昆虫は幼虫として水中に生息していることから、採集による調査の効果が高いため、冬季の調査を検討すること。
両生類や爬虫類の分布状況を把握するため、捕獲や環境DNA調査12による同定を検討すること。
哺乳類の生息状況を確認するため、生態に応じて、センサーカメラやバットディテクターを用いた現地調査を検討すること。
 
(3)植物
 
植物の調査については、文献等により地域特性を詳細に把握した上で、それらを踏まえた確認適期、調査手法により調査を実施すること。
既に平成28年(2016年)と30年(2018年)に植生及び重要な群落の調査が行われているが、調査期間も短く、全域を網羅しているとは考えにくいことから、「静岡県レッドデータブック2020」で重要な植物が新たに選定されたことも踏まえ、改めて現地調査を行い、その上で予測及び評価を実施すること。
土地の改変を伴う造成工事後に行われる植栽や緑化の計画は、植物や地域の特性を踏まえて将来的に形成される植生群落を想定した上で、その維持管理方法を考慮したものとすること。
植物層調査として三季(春季、夏季、秋季)実施しているが、地域特性で重要な種に挙げられているミスミソウについては、開花期が2月中旬から3月であることから、植物相調査は1年を通じて実施するほか、資料で確認された重要な種の調査適期には確実に調査を実施すること。
 
函南町北部地域では、ブナやアカガシの巨木が確認されていることから、胸高直径が50cmを超えるような大径木について現地調査を行い、存在が明らかとなった場合には、環境保全措置を検討すること。
菌類(キノコ)の現地調査は、少なくとも二季(春季、秋季)実施すること。
 
(4)生態系
 
生態系の調査は1年を通じて実施すること。
本事業の実施に伴い、区域内の動物の生息環境が大きく改変されることから、有害鳥獣の農地への出没頻度の増加等、生態系の変化が及ぼす影響について調査、予測及び評価を実施すること。
 
9 景観
 
事業実施区域の南側に位置し、構造性盆地の典型的景観を有している丹那盆地は、伊豆半島ジオパークのジオサイトであり、「ふじのくに美しく品格のある邑づくり」に選定されていることから、眺望景観13に加えて、囲繞景観14についても調査、予測及び評価を実施すること。
 
丹那盆地ならではの「盆地の景観」の変化は、景観を軸とした観光への影響が大いに懸念されることから、「函南町景観計画」を踏まえ、地形の改変や森林の伐採等による自然景観資源への影響及び鉄塔による稜線の改変を可能な限り低減するとともに、太陽光パネルの彩度、明度及び反射を抑え、道路や周辺部から視認されにくくなるように配慮すること。また、近隣の住宅地や別荘地からの景観に影響を及ぼすことが懸念されることから、具体的な事業計画の策定に当たっては、「事業計画策定ガイドライン(太陽光発電)」(資源エネルギー庁)や「太陽光発電の環境配慮ガイドライン」(環境省)の内容を踏まえ、太陽光パネルの配置、高さ、色彩及び残置森林の配置などを検討し、環境保全措置として準備書に記載すること。
客観的な基準による予測及び評価として、フォトモンタージュ法を用いて、眺望景観及び囲繞景観の変化の予測及び評価を実施すること。その結果は、地域住民に対して十分に説明し、理解を得るよう努めること。
 
眺望点として、火雷神社、丹那断層公園、池ノ山峠、月光天文台を追加するとともに、事業実施区域は、函南町外からも視認できることから、町外の主要な眺望点である三島スカイウォーク、葛城山や、「函南町景観計画」に基づく景観軸である熱函道路、一般県道135号、函南冷川、柿沢川、来光川を追加すること。
特に事業実施区域の一部が、富士箱根伊豆国立公園内であることから、景観の変化の予測に当たっては、「国立・国定公園内における風力発電施設の審査に関する技術的ガイドライン(2013年3月、環境省)」の内容を準用し、視程がよい晴天時に撮影した写真を用いること。なお、使用する写真は、可能な限り四季を通して撮影したものとすること。
本事業の実施が景観に及ぼす影響は、太陽光パネルの設置完了後だけでなく、造成工事中にも生じることから、予測の対象とする時期に「造成等の施工による一時的な影響」を追加すること。
 
10 文化財
 
事業実施区域には、古道である根府川通15やこれに関連する古井戸が存在する上駒形像(町有形民俗文化財に指定)があったと言われている場所が含まれており、遺跡が存在する可能性があることから、事前に函南町と調整すること。
 
11 人と自然との触れ合いの活動の場
 
事業実施区域の周辺は、ウォーキングマップ「歩きたくなるまち函南」において、「軽井沢・田代公民館から歩く会」の散策コースとなっており、工事車両の主要な走行ルートと重複していることから、本事業の実施が、この散策コースに及ぼす影響について、調査、予測及び評価を実施すること。
 
12 廃棄物、残土及び伐採木
 
稼動期間が20年以上に及ぶ太陽光パネルには様々な有害物質が含まれている可能性があることから、稼働中に破損したパネルや事業完了後に処分するパネルを適正に廃棄する必要がある。こうした廃棄物の発生時期及び発生量を予測するとともに、可能な限り具体的な処分方法を準備書に記載すること。
本事業の実施に伴い大量の残土や伐採木が発生することから、予測される発生量と処分方法を準備書に記載すること。また、残土の処分先においても、環境に及ぼす影響を回避又は低減するよう配慮するとともに、伐採木については、可能な限り再利用に努めること。
 
13 反射光、輻射熱
 
反射光の予測及び評価地点は、景観における眺望点に準じて設定し、予測の結果を分かりやすく準備書に記載するとともに、眺望点が反射光の影響を受ける場合には、時期及び時間を示すこと。
太陽光パネルからの反射光や輻射熱が、人や家畜の健康及び農作物の生長に影響を及ぼすおそれがあることから、事例や知見を収集し、それらを踏まえて予測及び評価を実施すること。
 
14 交通影響
 
工事車両の通行は、地域交通に影響を及ぼすおそれがあることから、地域交通を評価項目に追加し、地域交通の状況を把握するとともに、本事業の実施に伴う周辺道路の渋滞や安全性の低下などについて、予測及び評価を実施すること。
 
15 電磁波
 
パワーコンディショナーや送電線から発生する電磁波が、電波障害を生じさせ、ラジオや防災無線に影響を及ぼすおそれがあることから、事例や知見を収集し、それらを踏まえて予測及び評価を実施すること。
 
16 その他
 
大規模な森林伐採及び太陽光パネルの設置は、事業実施区域及び周囲の気温に影響を及ぼすおそれがあることから、事例や知見を収集し、それらを踏まえて予測及び評価を実施すること。
施設の稼動後に太陽光パネルが台風等の強風により破損し、破片等が事業実施区域外へ飛散するおそれや漏電により火災が発生するおそれがあることから、維持管理方法や火災防止対策等を準備書に記載すること。
事業実施区域及びその周辺は盆地地形を有しているため、太陽光パネルを広範囲に設置することにより、反射光や輻射熱だけでなく、音波や気流への影響も懸念される。周辺住民だけでなく地域の人々の生活を脅かすことがないよう事例や知見を収集し、それらを踏まえて予測及び評価を実施すること。
 
 
注釈
 
1
「十国峠」とは、伊豆・箱根地域を代表とする観光地のひとつである。中世以前から霊山として、江戸時代後期には、十国五島を望む好適地として知られるようになった。
 
2
「砂防指定地」とは、砂防法に基づき、国土交通大臣が、国土の保全のため、下流域への土砂の流出を防ぐため、砂防設備を設置する必要のある土地及び山地の荒廃を防止するため、一定の行為を禁止若しくは制限する必要のある土地について指定する地域のことである。
 
3
「北伊豆地震」とは、1930年11月26日に発生したマグニチュード7.3の地震であり、断層西側の韮山(現伊豆の国市)、三島など狩野川下流域で大きな被害を生じた。全壊家屋2,165棟、死者272名と記録されている。
 
4
「パワーコンディショナー」とは、太陽光パネルで発電される直流電流を交流電流に変換するための機器のことである。送電や家庭用電源には交流電流が使用されている。
 
5
「浮遊粒子状物質」とは、大気中に浮遊している粒子状物質で、代表的な「大気汚染物質」のひとつ。発生源は工場のばい煙、自動車排出ガスなどの人の活動に伴うもののほか、自然界由来(火山、森林火災など)のものがある。粒径により呼吸器系の各部位へ沈着し、人の健康に影響を及ぼす。
 
6
「浮遊物質」とは、水中に浮遊または懸濁している直径2mm以下の粒子状物質のことで、沈降性の少ない粘土鉱物による微粒子、動植物プランクトンやその死骸・分解物・付着する微生物、下水、工場排水などに由来する有機物や金属の沈殿物が含まれる。SS、懸濁物質と呼ばれることもある。
 
7
「水田雑草群落」とは、農作業による人為的攪乱が一定の範囲で長年にわたり毎年持続的に行
われた結果形成された雑草群落のこと。
 
8
「伊豆半島ジオパーク」とは、伊豆地域の自治体、県、各種団体等が組織する伊豆半島ジオパーク推進協議会により認定作業が進められ、平成25年9月に同協議会が日本ジオパークネットワークへ加盟し、平成30年4月に世界ジオパークに認定されたものである。
 
9
「ジオサイト」とは、ジオパークの大地の成り立ちが分かる見どころをいう。伊豆半島ジオパークは131か所存在する。
 
10
「円弧すべり面を想定した安定解析」とは、斜面の安定解析手法のひとつであり、斜面が円弧を描くように崩壊すると想定し、この円の半径を変化させて最小となる安全率を求める手法。
 
11
「輻射熱」とは、赤外線や可視光線を含む電磁波によっておこる2つの物体間のエネルギー移動が、物体に吸収されて生ずる熱のこと。
 
12
「環境DNA調査」とは、環境中に存在するDNAを調べることで,生物の分布情報を得ようとする分析手法のこと。
 
13
「眺望景観」とは、視点場(展望台など)から視対象(山や川など眺望する対象)を見ることであり、視覚を通じて認知される景観像として捉える方法のこと。
 
14
「囲繞景観」とは、一定の範囲を有する空間領域中での視覚的な環境状況を意味する。山々に囲まれた盆地状の景観、農地の中に農家が散在する景観、歴史的な施設の散在する景観などと
して捉えられる景観であり、「景観」を把握するための技術手法のひとつ。
 
15
「根府川通」とは、東海道の脇街道として利用された道である。小田原、熱海、軽井沢及び三島を繋ぎ、箱根関所の裏関所である根府川関所を通ることから「根府川通」と称された。